過去の体験学習

過去の体験学習

年度 平成17年度
日付 平成17年8月4日(木)
概要

『p-進世界へようこそ』
山崎 隆雄 先生


いち, にい, さん……と続く数が「自然数」、そこにゼロやマイナスも含めたのが「整数」、2/3などの分数まで加えて「有理数」です。このように数の世界はどんどん広がってゆきました。さらに広い数の世界として、円周率 π などを含む「実数」や、マイナス1の平方根まで含む「複素数」のこともみなさんはご存じかもしれません。

この講義では、「実数」と平行して存在する「p-進数」と呼ばれる新たな数の世界をご案内します。新世界を訪れるときは誰もが感じるように、始めはこの「p-進世界」も奇妙な世界に見えるでしょうが、最後には p-進世界も(実数世界と同じく)豊かな面白い世界だということを体験していただきたいと思います。



『ギャンブルの数学』
笠原 勇二 先生


確率というと皆さんは「ああ、あのジャンケンとか赤玉・白玉、あるいはトランプが出てくるやつか」と思うかもしれません。しかし高校までに習う「確率」は実は確率そのものよりも順列組み合わせの話がほとんどなのです。ですから大学の確率論では順列組み合わせの話はあまり出てきません。順列組み合わせが苦手の人も安心してください。

では大学の確率論では何をするかと言えば、自然現象や経済等に現れる偶然現象を数学的に厳密に定式化して議論してみようということです。世の中には競馬競輪といったギャンブルに縁の無い人でも、何かの決断をするときに、運不運を考慮せざるを得ない場面は多いと思います。どこの大学を受験しようかとか、今日は傘を持って出るべきかとか。そのような場合、確率論は魔法のように正解を教えてくれるわけではありませんが、何が合理的かを教えてくれます。偶然がからむ場面では、運の良い者と合理的な者が得をし、 不運な者と不合理な者が損をします。運の方は仕方がありませんから、何が合理的かについて考えたいと思います。





10:00 ~ 12:00講義p-進世界へようこそ (山崎隆雄先生)

12:00 ~ 13:00昼休み学生食堂などに案内します

13:00 ~ 15:00講義ギャンブルの数学 (笠原勇二先生)

15:00 ~ 16:30放課後おやつ + 在学生との懇談会

16:30 終了証授与 写真撮影


 

年度 平成16年度
日付 平成16年8月6日(金)
概要

『無限の彼方』
塩谷 真弘 先生

1,2,3,・・・ のその先はどうなっているか考えたことがありませんか。もしかして ∞ ? 正解。じゃあ ∞ のその先は?えっ ∞ のその先なんてあるの? ・・・「あった方が面白い」は無理でも「あっても面白い」くらいには思ってもらえるような講義にしたいと思っています。



『万有引力の法則とフックの法則』
磯崎 洋 先生

今、高校では微分積分は習いますが、微分方程式は習いません。しかし微分方程式こそ自然界の基礎なのです。ニュートンは万有引力の法則を発見し、惑星の運行は逆2乗の力の項をもった微分方程式に従っていることを示しました。これがこの世界の基本法則です。ニュートンとほぼ同時代の人でフックという人がいます。フックはばねの力によって動く物体の運動法則を発見していました。万有引力の法則とフックの法則は違った法則なのですが、軌道を描いてみるとどちらも楕円です。違った法則なのに軌道は同じというのはなんとなく不思議です。ところが複素数を使った変換をしてみると、両者が互いにうつりあうことが分かります。ニュートンの運動方程式を解くのは高校の範囲では大変です。しかしフックの法則は三角関数だけで理解できますから、三角関数と複素数を使って惑星の運動を調べてみましょう。計算が難しくなったらコンピュータの助けを借りて運動の様子を目で見ましょう。意外なところからの数学、力学、コンピュータへの入門講義です。





  9:15 受付

 9:30 自然学類長あいさつ、事務連絡

10:00 講義 『無限の彼方』 塩谷真弘

12:00 昼休み

13:00 講義 『万有引力の法則とフックの法則』 磯崎洋

15:00 在学生との懇談会

16:30 修了証授与

年度 平成15年度
日付 平成15年8月8日(金)
概要

『素数は数えられそうか』
三河 寛 先生


素因数分解という言葉を聞いたのは中学生の頃だったでしょうか。経験的に各々の自然数は素数の積として表せ、この表示はひとつに決まります。つまり素数は積に関して自然数のベースになっていると考えられます。さて自然数は無限個ありますがそのベースとなっている素数は無限個あるでしょうか、それとも有限個なのでしょうか。紀元前に著されたユークリッド「原論」には素数が無限に存在することの証明が書かれているとか。そこで「指を折って数を数える」ように素数を数えていけるのかを考えてみましょう。 x を大きな正の実数とすると x 以下の自然数の個数は x と高々1しか違わないので、これはほぼ x であるといえます。では x 以下の素数の個数は x の関数としてどれくらいの大きさなのでしょう。いったいそんなことが分かるのでしょうか。


『曲線の微分トポロジー』
相山 玲子 先生

平面内で,滑らかな閉曲線に10円玉を接した状態で滑ることなく転がして一周させることができたとき,10円玉は自身の中心に対して何回転することになるでしょうか?閉曲線が10円玉と同じ周長の円ならば答えが「2」となることは、10円玉を2枚用意して試してみればわかるでしょう。 N 倍の周長の円ならば10円玉は「 N+1 」回転します。では、その円を長さを変えることなく変形したらどうなるでしょうか?曲線を平面上に置かれた紐とみなして、円周上にある(伸び縮みしない)紐を、平面から持ち上げたり尖ったところを作ったりすることなく、動かしてできる閉曲線を考えます。(ただし、できた閉曲線は自分自身と交わっているかもしれませんが。)このとき、問題の10円玉の回転数は(途中で多少行きつ戻りつするかもしれませんが)実は「 N+1 」のままです。その理由は、「平面上の閉曲線の回転指数が滑らかな変形に対して不変である」というトポロジー(位相幾何)の定理に基づいて説明できます。円の回転指数は「1」で、問題の10円玉の回転数は「回転指数+周長比 N 」となるのです。この講義では、閉曲線の位相不変量である回転指数をとりあげ、曲線の微分幾何的量である曲率との関係や、高さ関数の極大・極小点を数え上げて回転指数を計算する方法などを紹介します。





 9:15 ~ 9:30 受付

 9:30 ~ 9:40 自然学類長挨拶及び事務連絡

 9:50 ~ 11:20講義『素数は数えられそうか』 三河 寛

11:20 ~ 13:00 昼食・学内見学

13:00 ~ 14:30講義『曲線の微分トポロジー』 相山 玲子

14:30 ~ 15:45 在学生との懇談会

15:45 ~ 17:00 質問に答える時間・まとめ

年度 平成14年度
日付 平成14年7月27日(土)~28日(日)
概要


『多変数関数の微分と積分』
南 就将 先生

ある範囲を動く数 x に別の数 y を対応させる規則あるいは「しかけ」を「関数」といいます。高校では2次関数、三角関数、指数関数、対数関数などを学びます。一方、2つの数の組 (x,y) に別の数 z を対応させる関数(多変数関数)も当然考えられます。地図上の一点(それは緯度 x と経度 y との組 (x,y) で表される)にその地点の標高 z を対応させる関数などを考えれば、多変数の関数が科学のあらゆる局面で不可欠であることが容易に理解されるでしょう。と同時に多変数の関数に対する微分、積分はどのように考えればよいかという問題が生じます。この講義では、大学の微積分で本格的に学ぶ偏微分と重積分の初歩を解説しながら、多変数の関数に対する想像力を養っていただこうと思っています。


『曲がった空間―曲率は全てを語る』
山口 孝男 先生

曲線や曲面、そしてより高次元の“曲面”を総称して空間と呼びます。空間の曲がり具合を表す曲率という概念を定めて、曲がった空間を考察することは重要な空間認識の方法を与えます。曲率を通していろいろな空間を理解できる、という話しです。例えば、遊園地で 回転する乗物に乗っているときに、目を閉じていても何回まわったか理解できます。また、万一あなたが誘拐されて眼隠しされて車でどこかに連れて行かれたとしても、最終地点を理解できます(勿論そのようなことの無いよう十分気をつけましょう)。数学的には、これらは全て、曲線の曲がり具合を表す曲率といもので説明することが出来ます。そう、曲率は全てを語るのです。



『非可換の世界を覗いてみよう』
星野 光男 先生

あまり意識したことはないと思いますが、我々が扱っている数(実数または複素数)というのは「掛け算の順序が交換可能である」という著しい性質を持っています。つまり、我々は可換の世界で暮らしているわけです。従って、非可換の世界(即ち、掛け算の順序が交換可能でない様な数を基にした世界)においては、我々の常識が必ずしも通用しないという事態が起こり得ます。実際、可換から遠く離れた世界では、ちょっと想像出来ない様な現象が起こります。ここでは、非可換の世界をほんのちょっとだけ覗いてみることにします。




『民主主義国家構築のために』
坪井 明人 先生

議員の集合を I とし、I のべき集合( I の部分集合全体)の部分集合 F を一つ定めます。 F に属する A を多数派とよびましょう。さらに、A または A の補集合のいずれかは多数派になり、両方が多数派にはならないなどいくつかの条件をおきます。

(*)法案1の賛成者は多数派なので可決され、法案2も可決されました。
よって、両法案に賛成の人が多数派です。

上の議論は正しいですか?正しくないと思う人が多数派でしょう。しかし「多数」という語感から離れますが、上の議論を正しくする「多数」があります。それは、独裁者が賛成することを「多数」と定義する時です。I が有限の場合は(*)を成立させるにはどうしても独裁者が必要です。しかし、I が無限ならば独裁者のいない国家が存在します。皆で民主主義を守ろう。





 平成14年7月27日(土)

 9:30-- 9:50 受付

 9:50--10:00 事務連絡

10:00--10:15 学類長挨拶 斎藤 功 学類長

10:30--12:00講義『多変数関数の微分と積分』 南 就将

12:00--13:00 昼食

13:00--14:00 学内施設見学

14:00--15:30講義『曲がった空間―曲率は全てを語る』 山口 孝男

15:30--17:00 質問に答える時間 藤田 尚昌 他

7月28日(日)

 9:00--10:30講義『非可換の世界を覗いてみよう』 星野 光男

10:30--12:00講義『民主主義国家構築のために』 坪井 明人

12:00--13:00 昼食

13:00--14:30 学生との懇談会

14:30--16:00 まとめ(各先生の部屋で)



 

年度 平成13年度
日付 平成13年7月28日(土)~29日(日)
概要

[代数] 『定規とコンパスによる作図』
藤田尚昌


定規とコンパスを使って「角の2等分線」をどうやって引くか、皆さんは中学生のとき習ったと思います。しかし、“定規とコンパスを使って「角の3等分線」をどうやって引くか?”という問題は、古代ギリシャ以来の難問の一つとして知られていましたが、1837年Wantzelという人によって「角の3等分線は引けない」ことが証明されました。大学では、3年次の代数学の講義で、体論を学びます。この作図不可能性の証明は、体論の1つの応用として簡単に与えられます。ここでは、その証明を平易に解説し、体論の一端に触れたいと思います。



[幾何] 『楽しい結び目・絡み目の数学』
金戸武司


日常生活でも身近に見られる結び目・絡み目現象は数学的対象としても興味深く、様々な研究が行われてきた。数学では閉じたものを考える。即ち、空間内の(太さのない)閉じたひも(=単純閉曲線)を結び目、何本かの結び目の集まりを絡み目といい、結び目は絡み目の一種とみなす。2つの絡み目について、一方を(曲げたり、伸ばしたり、縮めたり)自由に空間内で動かして他方に重ね合せられるとき、結び方・絡み方は本質的に同じとみなし、2つの絡み目は同値であるという。2つの異なる絡み目の区別には、同値な絡み目に対して変わらない量(=絡み目不変量)が有効である。その例として、Conway 多項式と Jones 多項式を取り上げ、計算法と後者の簡単な別証を紹介し、また、結び目をひもで作り、手品風変形を楽しむ。



[解析] 『応用数学における微分方程式入門』
山崎 満

現代、応用する立場の人々から見た数学を捉えてみましょう。その1例として、ここでは微分方程式を取り上げますが、予備知識としては、簡単な多項式の微分がわかれば十分です。そのなかでも、指数関数の別の定義の仕方を導出することによって、指数関数の性質を別な方法で導き出すことができます。この別な方法は、高校で習う方法よりも、ときとしてスッキリした形で表わされることがありますので、そのいくつかを見てみましょう。また、今までは数の指数関数、つまり、1次元ベクトル(スカラー)の指数関数を見て来ました。現代数学では、この概念を拡張して、n次元ベクトルの指数関数や無限次元の指数関数さらに非線形の指数関数が定義されます。こうした新しい数学が、間接的に天気予報や航空機の設計に役立っております。



[情報] 『いくつかのものを統計的に比較してみよう』
青嶋 誠

皆さんは学校で「統計」を勉強しているかも知れませんね。高校までの範囲では、正規分布の母平均に対する信頼区間を作ることが、ゴールになっています。よく読むと、母平均の信頼区間を作るために、どうやら、母分散の値は分かっていることを仮定しています。母分散の値が分からない場合、信頼区間はどうやって作ったらよいのでしょうか?また、2つの母平均の差に対して信頼区間を作りたい場合、どうしたらよいのでしょう?2クラスのデキを平均点で比較する場合が、これに当たります。3つ以上の母平均を、それぞれ対にして比較したい場合は、どうすればよいのでしょう?単純に2つの母平均の差の信頼区間を繰り返して作ればよいのでしょうか?この辺の議論に、数学が使われるのです。





平成13年7月28日(土)

 9:30-- 9:50 受付

 9:50--10:00 事務連絡

10:00--10:15 学類長挨拶 斎藤 功 学類長

10:30--12:00講義『定規とコンパスによる作図』 藤田 尚昌

12:00--13:00 昼食

13:00--14:00 学内施設見学

14:00--15:30講義『楽しい結び目・絡み目の数学』 金戸 武司

15:30--17:00 質問に答える時間 本橋 信義 他


7月29日(日)

 9:00--10:30講義『応用数学における微分方程式入門』 山崎 満

10:30--12:00講義『いくつかのものを統計的に比較してみよう』 青嶋 誠

12:00--13:00 昼食

13:00--14:30 学生との懇談会 涌井英幸、小島紫津香他

14:30--16:00 まとめ(各先生の部屋で)