過去の体験学習

過去の体験学習

年度 平成28年度
日付 2016年8月12日(金)
概要

「宇宙の形と結び目の不思議」 石井 敦  先生

事前掲載概要:
 結び目理論とよばれる数学の理論があります。出かける前に靴ひもを結んだり、イヤホンのひもを結んで保管したり、ダンボールや新聞を縛って古紙回収に出したり、日常では様々な場面で結び目が現れます。

そんな日常にあふれた結び目は、数学で研究されています。これまでに学んできた数学からは、結び目がどうして数学と関係するのか、想像できないかもしれません。
一見、複雑に見える結び目でも、ほどけていることがあります。(ひもの両端を強く引っ張ると、ほどける結び目を作ったことはありませんか?)止め結びは、ひもで輪を作り、その輪の中にひもの片端を通すことで得られる結び目です。文章で書くと難しく感じますが、みなさん一度は作ったことがある簡単な結び目です。止め結びは、ひもの両端をどんなに強く引っ張ってもほどけません。
二つの結び目が与えられたとき、その二つの結び目が同じ結び目かどうか、どうやって判定したらいいでしょう?
ほどこうと1時間頑張って、ほどけなかったからと言って、本当にほどけない結び目でしょうか?もしかしたら、もう1時間頑張ったら、ほどけるかもしれません。でも本当に、ほどけない結び目だったら何時間頑張ってもほどけません。
数学では、結び目を理論的に扱うことができ、この無限に時間の掛かってしまう問題を回避することができます。結び目理論では代数、幾何、解析、何でも使います。様々な切り口からの研究が結び目理論を豊かにしています。
結ぶという現象のあるところ、結び目理論があります。
宇宙の形が結び目によって表されるということは驚きでしょうか?最近は、DNAやたんぱく質の性質と結び目との関係が研究されています。作用素環論という全く別の理論から結び目の不変量を構成したジョーンズはフィールズ賞を受賞しました。
今回の体験学習では、結び目理論の初歩に触れることで、高校までの数学からは想像の難しい、受験数学から解き放たれた自由な数学を体験することができればと思います。
プログラム
9:30 受付開始
10:00~11:30 講義と演習
11:30~13:00 昼食・昼休み (班ごとにお弁当を食べました。)
13:00~14:30  講義と演習
14:40~15:50 懇談会・修了セレモニー(修了証をお渡ししました。)
16:00~17:00 筑波大学中央図書館見学・学内散策
 
体験学習当日の様子: 参加者達はまず受付で一本の紐と,結び目の絵が描かれた紙を配布され,同じ結び目が描かれている席を自分で探すところから始まりました. 今回の体験授業の内容は結び目理論の入門講義です.数学でいう結び目とは,一本の紐を絡ませて両端をつなげたもので,ぐねぐねと変形させて同じ形になるものは全て同じ結び目とみなします. 

午前中の内容は配布された紐を指定された形に変形してみたり,絵を描いて考えたりと,実際に手を動かして考える課題が与えられました.生徒達は中学校や高校では習わない「トポロジー」の考え方に苦戦しながらも,グループで相談して問題を解こうと奮闘していました.

午後は多項式不変量を用いて結び目を区別する内容に入りました.ある2つの結び目が同じ結び目であることを示すには実際に変形できることを確かめればいいわけですが,異なる結び目で あることを示すには,「いくら頑張っても変形できない」というだけでは不十分です.そこで今回は結び目をあるルールに従って多項式で表し,その多項式を比べることで異なる結び目かどうかを判定しました.見たこともない数式に最初は皆さん面食らっている様子でしたが,TAの方を含め,周りと相談して取り組むことで解決できていました.

普段学校で習うような数学とは一味違う数学に触れ,数学とはいかに自由で楽しいものなのかを実感できる体験学習だったのではないかと思います.

 

年度 2019年度
日付 2019年8月9日(金)
概要

「オイラーの公式とトポロジー」    丹下 基生 先生


 平面上にいくつかの頂点を描き、その点をいくつかの交わらない辺でつないで得られる図形を描きます。下の絵はその一例です。このとき平面は幾つかの領域に分割されます。



 1750年、オイラーはゴールドバッハに宛てた手紙の中で次のように書いています。
 「上のような図形を描いて、平面をどんなふうに分割しても、頂点、辺、領域の数をそれぞれV, E, Fとしたとき、それらの間には、

$$V - E + F = 2$$


なる美しい関係がある!」
 オイラーの手紙のあと、この公式は正しいことが証明され、今ではオイラーの公式と言われています。この不思議な関係式を詳しく研究する中で、トポロジーという分野(やわらかい幾何学)が発展してきました。
 この体験学習では、まずは多面体などの例を通してオイラーの発見を追体験してもらいます。また、どうしてこの式が平面において成り立つのか、その仕組みを一緒に考えて行きたいと思います。また、体験学習の後半では、平面ではない曲面に図形を描いたとき、オイラーの公式の左辺V-E+Fの変化を観察し、右辺の2の意味に迫ります。一体どのような値に変化するでしょうか?この体験学習を通して、オイラーの発見は些細な偶然ではなく、現代まで発展してきたトポロジーの基礎となる考え方であり、文字通り、大発見であるということが分かるでしょう。


プログラム
8月9日(金)第1エリア1E303

9:30     受付開始
10:00~11:30 講義と演習  「オイラーの公式とトポロジー」 講師:丹下 基生 助教
11:30~13:30 昼食 昼休み(学食等にご案内します.昼食代を持参して下さい.)
13:30~15:00 講義と演習 「オイラーの公式とトポロジー」 講師:丹下 基生 助教
15:10~16:20 懇談会・修了セレモニー(修了証をお渡しします.)

年度 2022年度
日付 8月4日
概要

 「平面にランダムに点をばらまけるか?」 福島 竜輝 先生

 

平面上にランダムに点をばらまきたいと思います。何となく下の図のような結果になることが想像できると思います。

しかしこれをどうやって実現するかは、意外に難しい問題です。まず領域を上の図の通りに正方形に限ったとして、「どの特定の点を見ても、そこに点が落ちる確率は 0 だから、最初の点をどこに取ってよいかわからない」、「仮に最初の点の取り方がわかって、そのあとも同じ手続きを繰り返せるとしても、いくつ点を置けばよいのかわからない」、といった問題があります。さらに無限に広がる平面に点をばらまこうと思うと、最初の点を置く場所の悩みはさらに大きくなります。仮に正方形の場合が解決したとすれ ば、平面を正方形のタイルに分割して、それぞれの中にランダムに点をばらまくという方法が考えられますが、「タイルの一辺を 1 にしたときと 2 にしたときで、同じ結果が得られるのか? 蜂の巣のように正六角形に分割してはいけないのか?」など心配の種は尽きません。

この体験学習では、上の問題について一つの自然な方法を提案し、それで上の心 配事が解決しているかを考えてみることにします。またその過程でネイピア数(またはオイラー数)と呼ばれる面白い数が自然に登場するので、ときどき脱線しながらその数に関してもいろいろな性質を調べてみたいと思います。

プログラム
8月4日(木)Zoomにてオンライン開催

9:30〜  入室可能
10:00〜10:05  開会宣言、講師・TAの紹介など
10:05〜11:30 講義と演習「平面にランダムに点をばらまけるか?」講師: 福島 竜輝
11:30〜13:30 お昼休み(各自で昼食をとって下さい。)
13:30〜15:00 講義と演習「平面にランダムに点をばらまけるか?」講師: 福島 竜輝
15:05〜15:15 学類長(佐垣先生)のお話
15:15〜15:45 アンケート集計結果発表と回答・質疑応答
15:45〜16:40頃 懇談会