これまでの説明会や体験学習の際に参加者の皆さんから出た質問をまとめました。進路を選ぶ際の参考にしてください。
大学での生活・学生生活について
筑波大学数学類の特色は、何ですか?
筑波大学数学類には約30名の教員がいます。卒業研究などのセミナーによる木目の細かな指導は、筑波大学数学類の伝統です。授業に関しては、代数、解析、幾何といった抽象的な数学を学べるだけでなく、数理統計学、数理論理学、計算機数学といった応用的な数学も学ぶことができます。これが、筑波大学数学類の大きな特徴です。他学類の授業も比較的自由に受講することができます。学生に関しては、本学の前身が東京教育大学ということもあって教員免許を取得する人が多く、これも筑波大学数学類の特徴といえます。
筑波大学数学類の授業は、どのようなものですか?
大きく分けて、講義と演習そしてセミナーがあります。講義では、「関数の連続性とは何か?」「f(x)=x が連続なのはなぜか?」のように、『とは』(定義)と『なぜ』(証明)を重視します。演習では、練習問題を解いて理解を深めます。セミナー(外書輪講・卒業予備研究・卒業研究)では、学生数名がグループを作り、指定されたテキストの内容を交代で説明し、担当教員の指導のもとで議論を深めます。筑波大学数学類では、受講生が問題を解けるようになるだけでなく、数学の理論体系を組み立てられるようになることも目標としています
大学の数学と高校の数学の違いはなんですか?
まず初めに高校と大学の違いを二つほど挙げてみましょう:
・高校の友達は主に自分の住んでいる地域から通う人ですが、
大学には全国からあるいは海外から沢山の人が集まっています。
同様に,教員も様々な場所から様々な教育を受けて教壇に立っています。
・高校では必要とされる全ての科目を受講しなければなりませんが、
大学では受講したい科目を自分で比較的自由に選べます。
生活の仕方も皆さんに任されています。一方で皆さんが自由に選択したことに対しては,
皆さんご自身が責任を取ることが求められます。
上のような違いは数学についても当てはまります。
大学で学ぶ数学は,高校数学より自分で自由に考えられる一方,
考えたことを様々な人に納得してもらうためにきちんとした裏付けを与えることが求められます。
裏付けを与えるための強力な手段の一つは論理性です。
ですから大学で数学を学ぶ際には,論理的であることが強く求められると言えるでしょう。
大学の数学はどういう人に向いてますか? 高校時代にどんな力をつけておけば大学の数学についていくことができますか?
まわりを見渡してもいろんなタイプの学生さんがいて、
大学の数学が特ににこういう人に向いていると言い切るのは難しい気がします。
ただ、粘り強く考えられる人は確実に数学に向いていると思います。
分かった振りをしないことも大事です。
受験勉強のときに、難しい問題にもある程度時間をかけてじっくり取り組む。
複数の解法があればいろんな角度からその問題を眺めてみる。
受験勉強では公式を使いこなすことも必要ですが、何故公式が成り立つのかを
問い直し、公式に辿り着く道をじっくり見つめ直してみては如何でしょうか。
このような地道な経験を通して、
これまで見えなかった何かが見えて来ると思います。
卒業後の進路について
筑波大学数学類を卒業すると、どんな職業に就けますか?
現代社会は、科学・情報技術に大きく依存しています。科学・情報技術において、思考の基本的な枠組みを提供する共通の言語が、数学です。現代社会が、数学に秀でる人材を多く必要とする理由が、ここにあります。筑波大学数学類の卒業生は、数学の研究者をはじめ、アクチュアリー、システムエンジニア、医学薬学統計などの統計解析に携わる職種、金融商品の開発や投資戦略を考案する職種、中高等学校の教員など、幅広い分野で活躍しています。
卒業生の具体的な就職先、業種、進路を教えてください。
卒業後の進路のページをご参照ください。
大学院に行った後の進路にはどのようなものがありますか?
博士課程前期終了後の進路のページをご参照ください。
数学について・研究について
数学は、どのようなところで役に立ちますか?
数学は、科学の多くの分野で、理論を記述し展開するための基礎学問になっています。数学は、その厳密性や普遍性により、多くの科学研究の土台として、科学の発展に多大に貢献しています。数学は、物理学、工学、経済学、生物学などに広く応用され、また、統計学を通じて医学や心理学、社会調査、保険業などにも使われています。数学は、現代社会において多様な役割を担っているといえるでしょう。
数学の研究とはどういうものですか?
数学の研究はとても自由です。
研究をする際は、自分が最も興味を感じた問題のなかから自分の研究テーマを自由に選びます。
自分自身で、新たに問題を設定することも研究ではたいへん大切なことです。
研究の手法ややり方も、(指導教官や共同研究者からのアドバイスを受ける場合も
勿論ありますが)自分で決めていきます。
未解決問題を解くことを目指す研究や現象の本質を理解することを目的とする研究、
人を魅了し感動させる真実を発見する研究もありますし、あらたな理論体系を構築する
研究もあります。
数理科学や生命科学、工学や経済学への応用を目的とする数学の研究もあります。
数学には、たくさんの分野がありますが、幾つかの分野に関連するような研究、
数学の枠を超えた学際的な研究テーマもあります。
何人かが共同して研究をすすめる場合もありますし、一人で問題に取り組むこともあります。
数学の研究は、とても楽しく、やりがいのあることです。
美しい真理を発見した時の感動、やりがいのある研究テーマで研究成果を得た時の充実感や
達成感を味わったら、数学の研究をもっともっとしたいと望むようになります。
コンピュータと数学とはどんな関係にありますか?
現在のコンピュータの動作原理は数学(基礎論)によって
基礎づけられています。ですが、これから数学を学ぶ者にとっては
このことはそれほど重要ではないでしょう。むしろ,コンピュータは,
数学を学んだり研究する上で(紙と鉛筆以上に)重要で不可欠な道具で
あると考えてください。
複素数の虚数単位 i は日常生活において表現できないものだと思うのですが、 何か役に立っているのですか?
数学は複雑なものを簡単に表示したり、理解したりするときに大いに役に立ちます。
実直線1本だけを考えている時には余り複素数は役に立ちませんが、
平面で物事を考える時や我々が住んでいる3次元空間、時間まで1次元だと考えた
4次元空間を考える時には、複素数は信じられないほど役に立ちます。
物理では、我々が住んでいる空間の直線は 実直線だけではなく、
虚数軸も考えた方が分かり易いと言われています。
電気を扱うための理論にも複素数が用いられています。
発電所から家庭用に供給されている電気は交流ですが、
その交流の計算に複素数を用いることが驚くほど有効であるため、
この分野の技術者にとっては複素数は必須の知識となっています。
高校の段階でも、sin や cos の加法定理を覚えるのは記憶力ですが、複素数で表記すると、
オイラーの定理 e(i a)=cos(a)+ i sin(a) から加法定理は簡単に出てきます。
ベクトルの代わりもしてくれます。
日常生活で使われないのは、ほとんどの人が理解できないからであって
役に立たないこととは違います。ですから使える人は実社会の様々な場面で重宝がられます。