世にも不思議な空間達との出会いの場:
幾何学的トポロジーとカオス力学系
ご研究の内容を教えていただけますでしょうか。
幾何学的トポロジーおよび位相力学系理論の研究を行っています。コンパクト距離空間および可分距離空間とその上の連続写像の幾何学的・力学的性質を、位相空間論、幾何学的・代数的トポロジー、位相力学系理論およびエルゴート理論を駆使して研究を行っています。特に、近年は位相力学系に現れる複雑な不変集合の幾何学的構造と力学的構造の解明を主な目標にしています。一般に、連続写像の力学系は複雑なトポロジーを導くことが知られています。アトラクターをはじめとする不変集合は大変複雑な幾何構造をなしている場合が多く、そうした複雑なコンパクト距離空間の幾何学的構造・力学的構造はたいへん興味深い研究対象となっています。
ウリゾーン万有空間:全ての幾何学的対象(可分距離空間)を等長的に含む空間
ご研究の特色や魅力について、お聞かせください。
幾何学的トポロジーでは、ユークリッド空間、ヒルベルト空間、ウリゾーン万有空間、関数空間・・・などに含まれる可分距離空間全体を研究対象にします。ウリゾーン万有空間は全ての幾何学的対象を等長的に含むとても大きな空間です。研究対象である空間は、局所的に良い空間(例えば 多様体、多面体)に限定しないトポロジーですので、我々の直感に反するような世にも不思議な空間や野性的な空間が多数登場します。最近では、カオス力学系のストレンジアトラクターとしてお馴染みになっている空間も含まれます。フラクタル構造をもつ幾何学的図形も研究対象ですが、まだまだ序の口の空間です。それはもう想像を絶するような魅力的な空間が多数存在します。幾何学的トポロジーを研究していて面白いのはこうした不思議な空間に出会えることです。こうした複雑な空間を扱える理論を求めて研究しています。
ストレンジ・アトラクター(Solenoids)
研究室の学生の方々は、どのような研究を行っていますか。
幾何学的トポロジーおよび位相力学系理論、特に位相空間論、連続体論、次元論、ANR理論、エルゴート理論、エントロピーなどです。
平面を分割しない等質な連続体(Pseudo-Arc)
学生に向けてメッセージをお願いします。
肝心なこと(数学はもちろん含まれます)は自分の頭で考えてください。とにかく、自分の頭でとことん考えること。書物に書いてあること、人に言われたことを無批判に受け入れるのではなく、じっくり時間をかけて“自分の頭を通して”理解する習慣を身に着けてください。脳みその訓練と思って意識的に続けることでその能力を大きく伸ばすことができます。また、人生は長丁場です。皆さんの夢の実現には体の健康がなにより大切です。頭だけでなく体も鍛えてください。現在、色々な文明の利器が世の中に溢れていますが、その利用は控えめにして自分本来の力を伸ばすようにしてみてはどうでしょうか。