情報数学分野

 数理統計学(青嶋 誠,矢田和善,大谷内奈穂)

自然界や社会において、偶然によって支配される事象が数多く存在します。偶然によって生じる不確実性に、人間は長い間悩まされてきました。この不確実性に立ち向かう科学として、統計学は誕生しました。統計学を用いることにより、科学データの解析が可能になり、不確実性を考慮に入れて意思決定をすることが可能になります。いまや統計学は、自然科学、社会科学、人文科学、応用科学における様々な分野で応用されています。
 
統計学の骨格を数学的に構成する学問が、数理統計学です。現代社会において、科学データの解析に従事するためには、数理統計学に関する十分な知識と統計解析の豊富な演習が必要不可欠です。
 
筑波大学数学類では、数理統計学の講義と演習が、充実しています。講義では、統計学の数学的基礎となる分布論と推測理論を踏まえて、推定論と検定論を系統的に学習できます。演習では、統計解析に必要な計算機の知識も修得できます。また、セミナー形式の授業も充実し、具体的な事例を通じて、理論と応用の両面でデータ解析の知識を身につけることができます。
 
大学院においては、近代科学に現れるDNAデータや画像データなどの超高次元データを統計解析するための理論と方法論や、通常の数理統計学では扱わない非正則な場合の統計的推測理論を、セミナー形式で学ぶことができます。これらの研究について、世界の最先端における科学を身近で追及できることは、筑波大学数学専攻の大きな特徴といえます。
 
数学専攻には、こうした研究を行っている教員が揃っており、各種数学特別セミナー、講義、研究集会などを通じて様々な数学を学ぶことが出来ます。前期課程修了時には日本数学会などの一般講演を目標に、後期課程修了時には、国内外での研究集会における研究発表および国際的な学会誌や学術誌に掲載されるレベルの欧文の論文発表を具体的な目標にしています。数学専攻では、次世代の数学を担い、また数学を通して社会に貢献する人材の育成に努めています。
 

 数理論理学(塩谷真弘,竹内耕太)

「正しい論証とは何か」を考える論理学は、哲学の一分科として古代から存在したことが知られています。しかし、論理学が数学の一部として認識されるようになったのは比較的最近のことです。それは、数学(例えば、17世紀に発見された当時の微積分)が複雑化・抽象化するとともに直観的な説明がかえって理解を難しくして、正しい論証に基づいた厳密な証明(例えば、19世紀に定式化されたε-δ論法)が必要とされたことと並行しています。そして1930年、ゲーデルが公理系と数学的構造を結びつける完全性定理を証明し、現代的な数理論理学=数学の一部としての論理学が始まりました。
 
筑波大学数学類では、全国的にも数少ない、数理論理学を本格的に学ぶためのコースを用意しています。まず完全性定理の証明を通じて、「数学における正しい論証とは何か」という問題に対する、1つの決定的な解答を学びます。セミナー形式の卒業研究では、完全性定理の基礎の上に立って、数理論理学の立場から4年間の大学数学を俯瞰し、集大成を行います。
 
大学院では、ゲーデルの先駆的研究から様々に分化発展した諸分野のうち、特にモデル理論と集合論を研究しています。モデル理論は、諸々の数学的構造(群、環、体、グラフ…)を統一的な視点から分類・研究する分野です。一方集合論は、現代数学のすべてを展開できるだけの大きな公理系を設定し、その枠組みの中で無限概念について研究する分野といえます。
 
数学専攻には、こうした研究を行っている教員が揃っており、各種数学特別セミナー、講義、研究集会などを通じて様々な数学を学ぶことが出来ます。前期課程修了時には日本数学会などの一般講演を目標に、後期課程修了時には、国内外での研究集会における研究発表および国際的な学会誌や学術誌に掲載されるレベルの欧文の論文発表を具体的な目標にしています。数学専攻では、次世代の数学を担い、また数学を通して社会に貢献する人材の育成に努めています。
 

 計算機数学(及川一誠,照井 章) 

現代の数学は、論証を中心とする学問ですが、20世紀から現在に至る間の計算機の発達もあり、数学の理論に関する予想を立てたりその内容を検証したりする上で行われる計算実験的手法は、数学の発展の上で大きな役割を果たしています。また、数学や理工学における様々な問題を解決する際には、数値計算にとどまらず、数学の種々の構造を計算機上に実装するなど、アルゴリズムやシステムにおける工夫を用いた計算機の活用が幅広く行われています。計算機数学は、計算機による実際の計算に結びついた理論、システム、応用を、数学の立場から研究する分野です。

計算機数学では、与えられた問題を、現実的な時間と計算機資源の範囲で解くことを重視しています。このため、理論的な正しさに加え、効率的なアルゴリズムの設計や計算量などに関わる議論も重要です。また、数値計算など、計算機数学の一部の分野では、連続的な実数を近似して扱うことがよくありますが、数の近似によって生じる誤差を適切に評価し、計算結果の正しさを保証する数値解析に関する研究も発展しています。こうした研究成果が、いろいろな問題を計算機上で解くための数学ソフトウェアの開発にも寄与しています。

筑波大学数学類では、計算機数学の基礎を包括的に学ぶことのできる講義や演習科目を用意しています。2年次の「計算機演習」では、数式処理システム等に触れながら、数学への計算機の利用やプログラミングの基礎を学びます。3年次の講義では、「ユークリッドの互除法」を軸に、数学の問題解決のためのさまざまなアルゴリズムや計算量など、実際の計算を視野に入れた数学の基礎を学ぶとともに、数値計算の基礎を学び、現実世界で扱われる数理的な問題を計算機を用いて解く手法への理解を深めます。セミナー形式の卒業研究では、それまでの講義内容を深めながら、プログラム開発などを通して、計算機数学の理論と実践を学びます。

大学院では、計算機数学のさまざまな分野の研究に取り組んでいます。その一例として、偏微分方程式などの近似解を、数学理論に基づいて高精度に計算する「数値解析」や、数式を計算機上で扱い、数学や理工学の様々な問題を解くためのアルゴリズムやシステムを研究する「計算機代数」などがあります。これらの研究を進める上で必要な計算機環境も充実しています。

数学専攻には、こうした研究を行っている教員が揃っており、各種数学特別セミナー、講義、研究集会などを通じて様々な数学を学ぶことが出来ます。前期課程修了時には日本数学会などの一般講演を目標に、後期課程修了時には、国内外での研究集会における研究発表および国際的な学会誌や学術誌に掲載されるレベルの欧文の論文発表を具体的な目標にしています。数学専攻では、次世代の数学を担い、また数学を通して社会に貢献する人材の育成に努めています。