過去の体験学習

過去の体験学習

年度 平成26年度
日付 2014年8月7日
概要 「黄金期の微積分学」 講師:西村泰一 先生

微積分学の基礎を築いたのはニュートンですが、彼は17世紀の人物です。18世紀にはラグランジュやオイラーを始め、名だたる数学者がいます。17世紀や18世紀の微積分学は冪零無限小を用いて展開されていました。冪零無限小というのは何回か掛け合わせると0になってしまうような小さい実数です。何回か掛け合わせて0になるなら、もともとその数は0ではないかと思うかもしれませんが、こんな数が0以外にも一杯あるような世界で微積分学を楽しんでいたのです。喩えていうと、河童みたいなものですね。昔はどこの沼や川に行っても、河童は必ず見ることができたのですが、最近は河童の目撃談はあまり聞きませんね。どうも死に絶えてしまったようです。環境の変化についていけなかったのかもしれません。

19世紀になると、冪零無限小はいい加減という烙印を押されて追放され、かわって微積分学は極限を用いて展開されることになります。高校の教科書には極限の単元があり、その後に微分や積分の 単元がきますが、これはそうした19世紀の動きを踏まえてのものです。大学で数学を専攻すると、さらに悪名高いεーδでそれに箔をつけます。オイラーというのは、きわめて多産な数学者ですが、”彼がもしも εーδで論文を書かなければいけなかったとしたら、あんなに沢山の論文を書くことは、とてもできなかったであろう”とは、よく言われる話しです。

この講義では冪零無限小を用いた微積分学を楽しんでもらいます。それがいかに躍動感に満ちたものか、堪能してください。

      

      

      

      
年度 平成27年度
日付 2015年8月7日
概要
「図形の合同についての再考」  相山玲子 先生


高校生の皆さんは,小学校・中学校の算数・数学において,合同な図形の定義や性質を学んできていることと思います。2つの「図形」が『合同』であるとは,一方の図形を「移動」させて他方に重ね合わせることができる場合でした。この「平面図形」の『合同』の定義において,「移動」とは「平行移動」「回転移動」「対称移動」およびその組み合わせで「平面図形」を動かすことでした。では,なぜこの3つの「移動」を考えればよいのでしょうか?

1つの答えとしては, ”「長さ」を変えない動かし方”はこの3種類で表せるという理由が挙げられます。皆さんがこれまでに勉強してきた「図形」の話は,ほぼ,”「長さ」を変えない動かし方で重ね合わせられる「図形」は同じもの(『合同』)であるとする「幾何学」”です。”いくつもの図形の中から『合同』なものを選びなさい” という問題は, ”『合同』な図形は同じ仲間として, 与えられた図形を分類しなさい”という「幾何学」の問題だということができます。

しかし,実は「幾何学」は対象とする「図形」や「移動」のルールを変えることによって色々な種類があるのです!例えば,「平面図形」の「移動」を,先の3つの操作に「縮小拡大」をつけ加えたものとすると,前述の『合同』の定義は『相似』の定義だと読みかえることができ,”『相似』な図形は同じ仲間とする「幾何学」”が考えられることになります。(ここまでは,ユークリッド幾何とよばれる最も古典的な幾何学です。)

今回の体験学習では,「図形」を「(平面内の)点の集合」として考え,「移動」のルールを拡張あるいは変更して得られる「幾何学」(非ユークリッド幾何,位相幾何・・・) も紹介して,その変更された「移動」の操作も体験してもらいながら,「幾何学」の雰囲気を感じてもらいたいと思います。

   

   



昼休みの座談会
「カレーを片手に集って”微積分学成立前夜の微積分学”について語る。」
座談会講師: 西村 泰一 講師

昨年度の体験学習で皆さんに講義をした西村が17,18 世紀の微積分学と19 世紀以降の微積分学(高校の教科書は19 世紀以降のやり方に依拠して書かれています)の違いについてお話しします。また、参加される皆様には ”微積分学序説 - 数学に悟りをもとめて- ”という冊子を無料で差し上げます。