過去の体験学習
過去の体験学習
年度 | 平成25年度 |
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日付 | 平成25年8月9日 |
概要 |
『フェルマー予想の話』 木村健一郎 先生 フランスの数学者フェルマー(1601-1665)は、自分の持っていた本(ディオファントスの「数論」)の余白に次のような意味のことを書きました。 「が3以上のとき、$$x^n+y^n=z^n$$をみたす自然数$$x, y, z$$は存在しない」 また「私はこのことの真に驚嘆すべき証明を発見したが、この余白はそれを書くには狭すぎる」とも書いています。$$x^2+y^2=z^2$$をみたす自然数$$x,y,z$$は無数にあるのに、$$n$$が3になったとたんに一つも無くなってしまうのです。フェルマーは彼の「証明」を書き残しませんでした。そのためこの主張はフェルマー予想と呼ばれます。その後300年以上にわたりこれを証明しようと多くの試みがなされましたが、誰も成功しませんでした。しかしその努力が数学の進歩のきっかけとなったこともあります(クンマーなど)。 最終的に証明を与えたのは、アンドリュー・ワイルスで、1994年のことです。しかし彼は直接証明したわけではありません。実はその何年か前に、フライとリベットという人たちが、「谷山-志村予想」という予想が正しければフェルマー予想が正しいことを示しました。谷山-志村予想は、一言でいうと「有理数体上の楕円曲線はモジュラーである」というものです。ワイルスはテイラーという人の協力を得て、谷山-志村予想(の重要な場合)の証明に成功したのです。谷山-志村予想(ワイルスの定理)は、20世紀の数学が達した一つの頂点と言えるものです。この講義では、その内容の不思議さを、実例の計算を通して感じてもらいたいと思います。ワイルスの仕事は、20世紀の初めに高木貞治が証明した「類体論」をさらに進めた「非可換類体論」への一歩を踏み出したものと言えます。類体論についても具体例を計算してもらい、その雰囲気を感じてみたいと思います。 |
年度 | 平成26年度 |
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日付 | 2014年8月7日 |
概要 |
「黄金期の微積分学」 講師:西村泰一 先生 微積分学の基礎を築いたのはニュートンですが、彼は17世紀の人物です。18世紀にはラグランジュやオイラーを始め、名だたる数学者がいます。17世紀や18世紀の微積分学は冪零無限小を用いて展開されていました。冪零無限小というのは何回か掛け合わせると0になってしまうような小さい実数です。何回か掛け合わせて0になるなら、もともとその数は0ではないかと思うかもしれませんが、こんな数が0以外にも一杯あるような世界で微積分学を楽しんでいたのです。喩えていうと、河童みたいなものですね。昔はどこの沼や川に行っても、河童は必ず見ることができたのですが、最近は河童の目撃談はあまり聞きませんね。どうも死に絶えてしまったようです。環境の変化についていけなかったのかもしれません。 19世紀になると、冪零無限小はいい加減という烙印を押されて追放され、かわって微積分学は極限を用いて展開されることになります。高校の教科書には極限の単元があり、その後に微分や積分の 単元がきますが、これはそうした19世紀の動きを踏まえてのものです。大学で数学を専攻すると、さらに悪名高いεーδでそれに箔をつけます。オイラーというのは、きわめて多産な数学者ですが、”彼がもしも εーδで論文を書かなければいけなかったとしたら、あんなに沢山の論文を書くことは、とてもできなかったであろう”とは、よく言われる話しです。 この講義では冪零無限小を用いた微積分学を楽しんでもらいます。それがいかに躍動感に満ちたものか、堪能してください。 |
年度 | 平成27年度 |
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日付 | 2015年8月7日 |
概要 |
「図形の合同についての再考」 相山玲子 先生 高校生の皆さんは,小学校・中学校の算数・数学において,合同な図形の定義や性質を学んできていることと思います。2つの「図形」が『合同』であるとは,一方の図形を「移動」させて他方に重ね合わせることができる場合でした。この「平面図形」の『合同』の定義において,「移動」とは「平行移動」「回転移動」「対称移動」およびその組み合わせで「平面図形」を動かすことでした。では,なぜこの3つの「移動」を考えればよいのでしょうか? 1つの答えとしては, ”「長さ」を変えない動かし方”はこの3種類で表せるという理由が挙げられます。皆さんがこれまでに勉強してきた「図形」の話は,ほぼ,”「長さ」を変えない動かし方で重ね合わせられる「図形」は同じもの(『合同』)であるとする「幾何学」”です。”いくつもの図形の中から『合同』なものを選びなさい” という問題は, ”『合同』な図形は同じ仲間として, 与えられた図形を分類しなさい”という「幾何学」の問題だということができます。 しかし,実は「幾何学」は対象とする「図形」や「移動」のルールを変えることによって色々な種類があるのです!例えば,「平面図形」の「移動」を,先の3つの操作に「縮小拡大」をつけ加えたものとすると,前述の『合同』の定義は『相似』の定義だと読みかえることができ,”『相似』な図形は同じ仲間とする「幾何学」”が考えられることになります。(ここまでは,ユークリッド幾何とよばれる最も古典的な幾何学です。) 今回の体験学習では,「図形」を「(平面内の)点の集合」として考え,「移動」のルールを拡張あるいは変更して得られる「幾何学」(非ユークリッド幾何,位相幾何・・・) も紹介して,その変更された「移動」の操作も体験してもらいながら,「幾何学」の雰囲気を感じてもらいたいと思います。 昼休みの座談会 「カレーを片手に集って”微積分学成立前夜の微積分学”について語る。」 座談会講師: 西村 泰一 講師 昨年度の体験学習で皆さんに講義をした西村が17,18 世紀の微積分学と19 世紀以降の微積分学(高校の教科書は19 世紀以降のやり方に依拠して書かれています)の違いについてお話しします。また、参加される皆様には ”微積分学序説 - 数学に悟りをもとめて- ”という冊子を無料で差し上げます。 |