『多変数関数の微分と積分』 南 就将 先生
ある範囲を動く数 x に別の数 y を対応させる規則あるいは「しかけ」を「関数」といいます。高校では2次関数、三角関数、指数関数、対数関数などを学びます。一方、2つの数の組 (x,y) に別の数 z を対応させる関数(多変数関数)も当然考えられます。地図上の一点(それは緯度 x と経度 y との組 (x,y) で表される)にその地点の標高 z を対応させる関数などを考えれば、多変数の関数が科学のあらゆる局面で不可欠であることが容易に理解されるでしょう。と同時に多変数の関数に対する微分、積分はどのように考えればよいかという問題が生じます。この講義では、大学の微積分で本格的に学ぶ偏微分と重積分の初歩を解説しながら、多変数の関数に対する想像力を養っていただこうと思っています。
『曲がった空間―曲率は全てを語る』 山口 孝男 先生
曲線や曲面、そしてより高次元の“曲面”を総称して空間と呼びます。空間の曲がり具合を表す曲率という概念を定めて、曲がった空間を考察することは重要な空間認識の方法を与えます。曲率を通していろいろな空間を理解できる、という話しです。例えば、遊園地で 回転する乗物に乗っているときに、目を閉じていても何回まわったか理解できます。また、万一あなたが誘拐されて眼隠しされて車でどこかに連れて行かれたとしても、最終地点を理解できます(勿論そのようなことの無いよう十分気をつけましょう)。数学的には、これらは全て、曲線の曲がり具合を表す曲率といもので説明することが出来ます。そう、曲率は全てを語るのです。
『非可換の世界を覗いてみよう』 星野 光男 先生
あまり意識したことはないと思いますが、我々が扱っている数(実数または複素数)というのは「掛け算の順序が交換可能である」という著しい性質を持っています。つまり、我々は可換の世界で暮らしているわけです。従って、非可換の世界(即ち、掛け算の順序が交換可能でない様な数を基にした世界)においては、我々の常識が必ずしも通用しないという事態が起こり得ます。実際、可換から遠く離れた世界では、ちょっと想像出来ない様な現象が起こります。ここでは、非可換の世界をほんのちょっとだけ覗いてみることにします。
『民主主義国家構築のために』 坪井 明人 先生
議員の集合を I とし、I のべき集合( I の部分集合全体)の部分集合 F を一つ定めます。 F に属する A を多数派とよびましょう。さらに、A または A の補集合のいずれかは多数派になり、両方が多数派にはならないなどいくつかの条件をおきます。 (*)法案1の賛成者は多数派なので可決され、法案2も可決されました。 よって、両法案に賛成の人が多数派です。 上の議論は正しいですか?正しくないと思う人が多数派でしょう。しかし「多数」という語感から離れますが、上の議論を正しくする「多数」があります。それは、独裁者が賛成することを「多数」と定義する時です。I が有限の場合は(*)を成立させるにはどうしても独裁者が必要です。しかし、I が無限ならば独裁者のいない国家が存在します。皆で民主主義を守ろう。
平成14年7月27日(土)
9:30-- 9:50 受付
9:50--10:00 事務連絡
10:00--10:15 学類長挨拶 斎藤 功 学類長
10:30--12:00講義『多変数関数の微分と積分』 南 就将
12:00--13:00 昼食
13:00--14:00 学内施設見学
14:00--15:30講義『曲がった空間―曲率は全てを語る』 山口 孝男
15:30--17:00 質問に答える時間 藤田 尚昌 他
7月28日(日)
9:00--10:30講義『非可換の世界を覗いてみよう』 星野 光男
10:30--12:00講義『民主主義国家構築のために』 坪井 明人
12:00--13:00 昼食
13:00--14:30 学生との懇談会
14:30--16:00 まとめ(各先生の部屋で)
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