(数学フロンティア対象科目です。)
複数の多変数多項式から可能な限り変数を消去する演算は,関孝和や Newtonの時代に既に終結式法が考案され,高校でも消去法が教えられ ているので何の問題もないと思うだろう。しかし,Sylvester 行列式 に触発され,20世紀初頭にMacaulayやDixonらが終結式法を研究し, 終結式には大きな余計因子(extraneous factors)が入ることを見出し たが,どれが余計因子かすらよく解らなかった。 一方,余計因子を含まない終結式は,1965年に(当時大学院生の) Buchberger が考案したグレブナー基底法で計算できて,与多項式系 から生成されるイデアルの辞書式順序での最低元であることが解った。 だが,グレブナー基底計算は非常に時間がかかることが多く,大規模 な系はいつまでも計算が終了しない,というジレンマを抱えている。 グレブナー基底は,現在の計算機代数で最も重要な概念であり,当然, 世界中のプロが寄って集って高速化に挑戦したが,算法が単純なので 手の付け所が少なく,半世紀以上も算法の骨格は不変である。
この世紀をまたぐ課題「余計因子のグレブナー基底によらない除去」 と,半世紀以上にわたる宿願「高速な終結式法を利用したグレブナー 基底計算の高速化」に五年前から挑戦し,不完全ながらかなりの成功 を収めつつある日本人の研究を紹介する(研究は現在進行中です)。
(談話会では,大学院生を主対象に極めて平易に話します) (講演用PDFは,講演日の数日前からダウンロードできます)
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