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筑波大学数学談話会

日時 2018/06/28
場所 自然学系棟D棟 509
講演者 松江要氏(九州大学)
講演題目 2006 - 2018/微分方程式の数値計算:特異なものを「素直」に扱う
概要 2006 - 2018
この道でお仕事をすることを志してから、様々な縁があり、当時では全く予想もつかなかった活動をこれまで行ってきました。現在、活動範囲は収斂するどころかさらなる広がりを見せています。
本講演では、そんな講演者個人の活動を概説します。
特に、数学系の外の人々(諸科学分野や企業の方々)とのつながりや、そこに潜む数理科学的観点の活動の可能性を、講演者個人が携わっている範疇でご紹介します。
(時間は15分ほど。学部生や院生の聴講を歓迎します。)
参考:https://aimap.imi.kyushu-u.ac.jp/wp/event/2017k003
「異分野・異業種放浪記」@AIMaP公開シンポジウム「数学と産業の協働ケーススタディ」

微分方程式の数値計算:特異なものを「素直」に扱う
常微分方程式の解の“数値計算”についてのお話です。
近年では、様々な有限性に起因する打ち切りや丸めなどの誤差を全て包含して厳密な数値計算を実現する「精度保証付き数値計算法」が発達し、線型代数、非線型問題に限らず、最適化や微分方程式、力学系への応用も多く見られます。
しかし、特異な構造を持つ方程式の(精度保証付きに限らない)数値計算は、微分方程式に限らず、非常に限られた結果しか得られていないのが現状です。
常微分方程式に限っても、マルチスケールダイナミクスや爆発解、退化した微分方程式に特有の、取り扱いが非自明な問題が多く転がっています。

本講演では、そのような「特異」な微分方程式の解の精度保証付き数値計算を取り扱います。特に、マルチスケールダイナミクス、有限時間特異性にフォーカスします(後者は、爆発解や絶滅など。時間の許す限り様々なバリエーションを語ります)。
特異性を含む系でも数学的に綺麗な構造を有する結果が多く知られていますが、それらに素直に従えば、精度保証付き数値計算も標準的な手続きで実行可能となります。
むしろ、数値計算はこのような数理的構造に素直に従うことで可能となると考えられ、数値計算に潜む数理的構造の重要性を再認識させられます。