照井 章 (情報)

計算数学で未知の世界に挑む




数学を志したきっかけについて教えてください。

私は小学校の頃からコンピュータに触れる機会がありましたが、高校に入った頃に「人工知能」という言葉を耳にしました。そして、人工知能の研究がどのようなものかもよく知りませんでしたが、将来、人工知能の研究をしてみたいと思うようになりました。

その後、高校に在学中に出会った数学の恩師(本学第一学群自然学類および大学院数学研究科(いずれも当時)出身)に相談したところ「コンピュータを勉強しようと思ったら数学を勉強しておくとためになる」とアドバイスされ、それまでは筑波大学情報学類(当時)を志していたのですが、志望学部を変えて、筑波大学自然学類を志すことにしました。

現在の研究内容について教えてください。

私の研究分野は、計算機数学、特に「数式処理」と呼ばれる分野です。数式処理は、計算機を使って、数学に現われるいろいろな数式を扱って計算しようというものです。たとえば、高校の数学の授業で「多項式の因数分解」を学ぶと思いますが、そこで学ぶ因数分解の手法は、いわば「行きあたりばったり」の手法で、扱う多項式も、せいぜい3次か4次くらいの多項式がほとんどです。

一方で、数式処理で扱う計算においては「アルゴリズム」をつくります。「アルゴリズム」は、ある目的を達成するための一連の計算の手順を決めたもので、アルゴリズムに従って計算することで、どんな大きさの多項式でも因数分解できるようになります。「アルゴリズム」を使う部分が、高校までの数学と、今、私達が研究している数式処理との間で大きく異なる部分です。

普段、指導している学生との、セミナーでの研究や、セミナーの雰囲気について教えてください。

本年度(2015年度)は5人の大学院生と共同研究をしていますが、我々のグループでは、人工知能の一つの分野として、数式処理を使って、与えられた問題を解決するための計算に関する研究を進めています。

具体的には、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」、略称「東ロボ」プロジェクトに参加しています。このプロジェクトでは、大学入試問題を解くためのコンピュータのプログラムを開発していますが、そこで、数学の入試問題を解くためのプログラムの開発や、そのための基礎研究に取り組んでいます。

私のセミナーでは、セミナー室に机を並べて、ノートパソコンを持ち寄って、ソフトウェアを開発したり、アルゴリズムを考えたり、数学の問題を解いたりしています。そのような中で、メンバーの皆で討論したり考えたりすることを大事にしています。

このような共同作業や、数学の思考を進めるにあたっては、リラックスして問題や議論に集中するために、コーヒーとお菓子は欠かすことのできない大事なものと考えておりますので、毎回のセミナーの時に、コーヒーとお菓子は絶やさないように用意しています。


セミナー中の光景。机の手前にお菓子のトレイとコーヒーメーカーがあります

これから数学を志す方、もしくは、今、数学を勉強している方にメッセージをお願いします。


私からのメッセージは3点あります。

1点目は、数学を学ぶ際に、皆さん自身の頭と手を動かしてほしいということです。私自身も、大学に入るまでは、自分の頭と手を動かす習慣があまりなくて、大学に入ってから一時期落ちこぼれた時期がありましたが、そこから、自分の頭と手を動かすことが大事なんだということを学びました。

皆さんも、それぞれが取り組んでいる(数学の)問題があると思いますが、皆さんそれぞれのペースでよいと思うので、自分の頭で考えて手を動かして得たものを、一つ一つ、自分のものにしていってほしいと思います。

それから、もし、計算機数学を志すのでしたら、頭と手に加えて、計算機を使って、プログラミングの楽しみを見出す機会があるとよいのではないかと思います。

2点目は、自分の好きなことを大切にしてほしいということです。これは、数学に限ったことではありません。私は、音楽が趣味で、中学の時からホルンを吹いています。大学から大学院にかけては、ホルンの先生のところにレッスンに通ったりして、相当のめりこんでいた時期もありました。今でも定期的に楽器(演奏)を続けています。皆さんも、それぞれが好きで取り組めるものを見つけて、大事にしてほしいと思います。

最後は、数学に限らないかもしれませんが、楽天性をもって、楽しみながら取り組んでもらいたいということです。皆さんの中には、もしかすると、受験のために数学を学ばなければならないなど、ある種の義務感で数学に苦労している人もいるかもしれません。しかしながら、本来、数学は、私達の知識の世界を広げてくれる、楽しい活動の一つだと私は信じています。私達も、日々、(数学の)問題を解いたり、アルゴリズムを考えたりする中で、問題がうまく解けないことがあったり、予想と異なる答えが出てきたりすることもありますが、そんな時にも、楽天性を忘れずに「今回うまくいかなかったけど、次は何とかなるかな...」という気持ちで、リフレッシュしてまた問題に取り組んでいます。皆さんにも、楽天性を忘れずに、数学の楽しさを見出すようなことを続けていってほしいと思います。

2015年度「東ロボ」筑波チームのメンバーと

(聞き手:國廣尭之)
(写真:数学域広報委員会、石田真央)

参考:
照井章先生のホームページ (researchmap) http://researchmap.jp/aterui 
TSUKUBA FUTURE #049 人工知能は大学合格の夢を見るか?(数理物質系 照井章 准教授)
https://www.tsukuba.ac.jp/notes/049/ 
人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」 http://21robot.org/